「検温させてください。」
「はい。」(おでこを見せる)
こんなやりとりが当たり前になった今日ですが、私は今でもこのやりとりに慣れません。
生え際を見られたくないからです。
正確には私に生え際は存在しないので、ウィッグと頭皮の境目を生え際と呼んでいます。
先のやりとりも、一時期に比べると減りましたが、うっかり病院などに行くと遭遇します。
「検温させてください。」
受付の方が体温計をもって手を伸ばしてくる。くっ、ここはカメラ式の検温ではないのか…では仕方がない。私の生え際を目に焼き付けるがいい。なんて開き直りは私には一生かかっても無理なので、なんとか涼しい顔をしてはやくその場を通り抜けることに全意識を集中させます。
あまりに速く済ませようとすると、かえって時間を取られるものです。
焦らず生え際を見せない位置に手を添え、おでこを見せます。
こちとら、昨日、今日ウィッグユーザーになったやつとは違うんだという気持ちでおでこを差し出します。
体温を計測する音が響きます。無事に計測できたようです。少し肩の力が抜ける瞬間でもあります。
そういえば、最近カメラ式の体温計って見なくなった気がすると思った今日でした。